調査でわかったこと

カフェインって?妊娠中のカフェインダメなの?

カフェインって?妊娠中のカフェインはダメなの?

カフェインは私たちがコーヒーや紅茶、炭酸飲料などから摂取している物質です。カフェインは肝臓で代謝され、パラキサンチン(代謝物の約8割)やテオブロミン、テオフィリンなどの物質になり、最後は尿と共に体外に排泄されます。代謝される速度には個人差があり、カフェインの代謝が速いタイプと遅いタイプがあることがわかっています。日本人の約4割は代謝が速いタイプと言われていて、カフェインはすぐにパラキサンチンなどの代謝物になります。妊娠中のお母さんが摂取したカフェインは胎盤を通過するため、胎児にも影響があると考えられていますが、影響はほとんどないという報告もあります。その理由として考えられるのが、このカフェインの代謝速度の違いです。

妊娠中にカフェインを摂取すると胎児の成長にどんな影響があるの?

北海道スタディでは、お母さんのカフェイン代謝速度と1日当たりの摂取量が胎児の成長に与える影響について調べました。妊娠中にカフェインを摂取しても出生時の体格(体重・身長・頭囲)に影響はありませんでした。

しかし、お母さんのカフェイン代謝速度の違いでみたところ、カフェイン代謝速度が遅いお母さんが1日にカフェインを100mg未満しか摂取しない場合と比べて、カフェイン代謝速度が速いお母さんが1日300mg以上のカフェインを摂取すると、赤ちゃんの出生時頭囲が0.8cm小さくなりました。

また、妊娠中の喫煙は胎児の成長に悪影響があることがわかっているので、お母さんの喫煙とカフェイン摂取との関連も調べました。すると、非喫煙でカフェイン代謝速度が速いお母さんが1日300mg以上のカフェインを摂取すると、赤ちゃんの出生時頭囲が1.0cm減少し、さらに出生時体重も277g少なくなりました(図1、図2)。しかし、喫煙したお母さんの赤ちゃんではこのような関連はみられませんでした。これはカフェイン代謝速度の違いより喫煙の方が、胎児の成長への影響が強かったためと考えられます。一方、カフェイン代謝速度を考慮しても出生時身長に影響はありませんでした。

この結果はどうやって調べたの?

妊娠中のお母さん本人の喫煙・飲酒状況、食生活や教育歴などを調査票で回答いただきました。出生時体格など赤ちゃんに関する情報は病院カルテからいただきました。そして、調査票から妊娠中の1日当たりのカフェイン摂取量を算出して、①100mg未満②100-299mg③300mg以上、の3群に分けました。また、母体血でお母さんのカフェイン代謝速度のタイプを検査しました。

この研究から言えることは?

カフェインの代謝速度が速いタイプで出生時体格への影響がみられたことから、胎児の成長にはカフェインそのものより、その代謝物であるパラキサンチンの影響が大きいと考えられます。先行研究でも、流産や子宮内胎児発育遅延のリスク上昇に母体血や臍帯血中のパラキサンチン濃度が関与していました。

胎児の成長には、お母さんが妊娠中に喫煙しないことはもちろん、カフェインの摂取も1日当たり300mgを超えないよう注意することがとても重要です。
文責:佐々木成子

出典:
Sasaki S, et al. Interaction between maternal caffeine intake during pregnancy and CYP1A2 C164A polymorphism affects infant birth size in the Hokkaido study. Pediatr Res. 82(1):19-28, 2017.