調査でわかったこと

妊娠中にダイオキシン類が体内に取り込まれたら、子どもの42月時点の発達にも影響する?

日常の身の回りや食物などから体内に取りこまれる化学物質が、妊娠中のお子さんに悪い影響を与えないか心配されています。北海道スタディでは、妊娠中のお母さんの血液に含まれる様々な化学物質と、赤ちゃんの発育・発達との関連を明らかにするよう研究を進めています。

ダイオキシン類は、ゴミの焼却や工場からの廃棄物、自動車の排ガスやたばこの煙にも含まれる化学物質です。自然界で分解されにくいため、動物や人の体内に長い期間残ります。これまで、日常生活の低い濃度でも、出生体重や神経発達に影響する可能性が報告されています。私たちの以前からの研究では、6か月で運動系の発達に遅れが見られましたが、18か月ではその影響が消えていました。

さらに42か月(3歳半)の時にも影響があるか確認するため、検査にご協力いただきました。検査は、知的能力の発達をみるK-ABC(Kaufman Assessment of Battery for Children)という検査を行いました。この検査では、身の回りから得た情報を理解する力(認知処理得点)と、経験から得た情報をどれくらい身につけたか(習得度)をみます。ダイオキシン類は、妊娠中のお母さんの血液中に含まれる、化学構造の異なる29種類を分析し、個々の測定物質の濃度とK-ABCの得点との関連をみました。

その結果、全体では悪い影響は認められませんでした。男女別にみると、男児では、一部の化学物質の濃度が高いと、認知処理得点が低くなりました。女児ではそのような影響は認められませんでした。また、習得度は、化学物質そのものの影響より、養育環境など生後の環境のほうが発達に影響していると考えられました。そしてこの影響は女児に強く表れていました。

この研究から、6か月で認められたような、ダイオキシン類濃度が高いほど発達を遅らせる関連は42か月では見られませんでした。ただ、一部のダイオキシン類で、男児に認知処理の遅れがみられ、男女で影響の違いが明らかになりました。今後も発達の様々な能力に悪い影響がないか見ていく必要があると思われます。

出典:
Tamiko Ikeno, et al. Effects of low-level prenatal exposure to dioxins on cognitive development in Japanese children at 42 months. Science of the Total Environment, 2017