調査内容のご紹介

年齢別の調査内容

1歳半(環境と社会的環境の精神運動発達への影響)

社会環境はめまぐるしく変化していますが、地域社会が親の子育てやお子さまの成長発達にどのような影響を及ぼしているのか、よくわかっていないことが多くあります。1.5歳の調査では、私たちを取りまく様々な環境、特に社会的環境が、お子さまの健康、特に精神運動発達にどのような影響を与えるかについて調査することで、未来あるお子さまが健やかに生活できるような環境づくりに役立てようと思っています。

1歳半・3歳(親の社会経済要因と子どもの成長発達)

お子さまが3歳になると、運動発達にとどまらず言語や社会性の発達は、めまぐるしいものがあります。近年、欧米では社会経済要因(ご家庭での暮らし方や経済的な状況など)が、お子さまの心身の発達にさまざまな影響を与える可能性が明らかになりつつあります。しかし、日本の社会的環境が幼い子どもたちの発達にどのような影響があるのかは、よくわかっていなません。北海道スタディでは、お子さまを取り巻く社会的環境と成長発達(運動発達、言語発達、社会性、自立など)について1歳半・3歳にアンケート調査を実施しています。

2歳・4歳(成長・発達やアレルギー

私たちをとりまく生活環境において、人工的につくられた化学物質で内分泌かく乱作用をもつ物質は、「環境ホルモン」といわれ、子どもの発達や免疫機能など、人体にさまざまな影響を与える可能性がわかってきました。2歳と4歳のアンケート調査票では、環境ホルモンと子どもの健康や発達・アレルギーとの関係についての調査・研究を実施しています。

5歳・6歳(子どもの社会性やコミュニケーション)

私たちをとりまく生活環境において、人工的につくられた化学物質で内分泌かく乱作用をもつ物質は、「環境ホルモン」といわれ、子どもの脳がつくられるときに吸収すると、成長してからの子どもの発達(人とのコミュニケーション能力や運動能力など)に影響を与える可能性があることが知られるようになってきました。そこで、私たちは環境化学物質とお子さまの発達との関係について明らかにすることを目的として調査をします。

5歳と6歳のアンケート調査では、いずれも発達についての質問をしていますが、それぞれ違った側面からお子さまの発達の様子を調べています。各アンケート調査票は、国際比較を行うために、世界的に広く使われている質問票の日本語版を採用し、隔年連でのお子さまの発達の様子を調べています。また、これまでにいただいたアンケート調査の回答、血液などの生体試料から妊娠中のお母さんとお子さまが体に取り込んだ環境化学物質の量を測定し、これらの結果を合わせて、環境化学物質によるお子さんの発達への影響を検討しています。

7歳(アレルギー・感染症や室内環境)

アレルギーや感染症に関しては、お子さまが小さいうちは病気の有無がはっきりわかりませんが、小学生になる頃に確定診断となります。また、小学校に入学する機会にお子さまは本格的に社会集団における生活が始まり、まわりの環境も大きく変化します。そのため、小学校という新しい環境でお子さまの成長やアレルギーなどの病気への影響を明らかにするためには、現在の生活の様子を調べることがとても重要です。
7歳の調査では、これまでのようなアンケートに加えて、現在の生活環境における化学物質の影響についての調査も行うことで、胎児期および生後の両方の環境の影響とお子様の健康について明らかにしていきます。

8歳(精神神経発達)

学童期は、身体の成長だけでなく、お子さまが学校において学習活動と集団生活を経験し、精神面でも発達していく時期です。お子さまのものの見方・考え方、行動の特徴といった精神発達には、胎内にいる時期からこれまでの環境が少なからず影響していると考えられますが、環境中の化学物質の影響については、明らかになっていないことがたくさんあります。
8歳の調査では、お子さまの行動に関した質問のほか、生活リズム、遊びの好み、テレビなどの視聴時間、子育ての環境などについて調べています。追加のアンケート調査では、お子さまの人との関わり方や子育ての様子などを調べています。これらの結果を合わせて、胎児期および生後の両方の環境と学童期の精神発達との関連について明らかにしていきます。

9-11歳(子ども医学調査)

札幌市および近郊にお住まいのお子さまを対象に、北海道スタディの連携医療機関となっている最寄りの小児科に行って頂き、身体計測、医師の診察、呼吸機能検査、採血、採尿、認知機能検査を実施いたします。提供いただいた生体試料(尿、血液)からお子さまが体に取り込んだ環境化学物質の量を測定し、これらの結果を合わせて、環境化学物質によるお子さんの健康や発達への影響を検討しています。

11歳~(二次性徴および体格)

私たちの体は、その複雑な機能を調節するための様々な仕組みを持っていますが、その仕組みの一つが「内分泌系」です。体の中の細胞で作られた「ホルモン」と呼ばれる物質は、血液などによって運ばれ、必要な時期に必要な場所でその作用を発揮することで、体の正常なバランスを整えます。体の外から取り込まれた物質が、この一連の過程に変化を与えて生物にとって有害な影響を及ぼすことを「内分泌かく乱作用」といいます。特に、人工的につくられた化学物質で内分泌かく乱作用をもつ物質は、「環境ホルモン」といわれ、甲状腺機能や成長、生殖機能などへ影響を及ぼすといわれていますが、まだはっきりとした結論はでていません。
11歳以降のアンケート調査では、お子さまの生殖器系の発達について調べ、胎児期や成長期にさらされている化学物質との関係を検討します。調査結果は、内分泌かく乱作用をもつ化学物質の適切な製造や管理に関する政策に役立てられます。

中学生(脳波の測定調査)

身の回りの様々な環境が、注意などお子さまの認知機能に影響していないか検討します。脳波によって、行動や質問票だけではわからない、わずかな変化も見つけ出すことができます。脳波測定は安全性が高いことが確認されており、病気の検査として使われることもあります。本調査は札幌市および近郊にお住まいの中学生のお子さまが対象です。

14ー17歳(思春期の健康および日用品の使用に関する対面調査)

札幌市および近郊にお住まいの思春期のお子さまを対象に日用品などに含まれる化学物質と思春期の健康に関して調べます。調査の内容は、身体計測(身長、体重、体組成)、採尿、採血、日用品に関する質問票調査、ハウスダストの回収、医師の診察(第二次性徴や健康に関する相談も可能)を行っています。

17歳(17歳調査)

環境中にある化学物質が健康に及ぼす影響は、成長に応じて続けて調べていくことが重要です。この調査では17歳以上のお子さまに、アレルギーや感染症、体格への影響に関する調査を質問票にて行います。

全年齢(無線通信の調査について)

近年、無線通信の環境は大きく変化し、お子さまの携帯電話やインターネットの使用も増加しています。日本では、総務省が『電波防護指針』というルールを定めて安全性を確保していますが、無線通信環境と子どもの健康の関連性については、長期的に調べていくことが大切です。質問票調査では、北海道スタディに参加している全ての方に、お子さまの携帯電話などの無線通信の利用状況や、普段の生活の様子などを伺います。対面による調査では、子ども医学調査、脳波測定、知能検査のいずれかに参加していただいたお子さまを対象に、携帯用の無線通信測定端末を持って3日間程度生活していただき、お子さまの身の回りの無線通信状況を測定します。

今後の予定

保護者の皆さまだけではなく、今後、成人(18歳)を迎えるお子さまに調査への参加と協力に関する同意のお願いをさせていただく予定です。

調査している環境要因

環境中の化学物質

北海道スタディ参加者の皆さまから提供いただいた生体試料(尿、血液)を用い、日常生活の中で体内に取り込まれた化学物質の濃度を測定しています。

短半減期化合物
フタル酸エステル、ビスフェノール、リン酸トリエステル、ネオニコチノイド、有機リン系殺虫剤、など

体内に取り込まれてから血中濃度が半分に減るまでに要する時間が数時間~数日と短い化学物質のことを短半減期化合物といいます。
北海道スタディで着目している短半減期化合物は、フタル酸エステル、ビスフェノール、リン酸トリエステル、ネオニコチノイド、有機リン系殺虫剤です。妊娠中のお母さまの血液やお子さまの尿を用いてこれらの化学物質を分析しています。
ネオニコチノイドや有機リン系殺虫剤は、農薬や殺虫剤として使用される化学物質です。フタル酸エステル、ビスフェノール、リン酸トリエステルは、可塑剤(プラスチックに柔軟性を与えたり加工しやすくするための添加剤)としてプラスチック製品の製造過程で添加される化学物質です。リン酸トリエステル類は難燃剤としても使用されており、家具や内装材、電化製品等に使用されます。
短半減期化合物は体内に取り込まれると代謝され速やかに尿中に排泄されますが、身の回りの製品の使用や食事などを介して継続的・恒常的に取り込んでいることによる健康への悪影響が心配されています。

長半減期化合物
ポリ塩化ビフェニル、ダイオキシン、有機フッ素化合物、有機塩素系農薬、など

体内に取り込まれてから血中濃度が半分に減るまでに要する時間が数年~数10年と長い化学物質のことを長半減期化合物といいます。
北海道スタディで着目している長半減期化合物は、ポリ塩化ビフェニル、ダイオキシン、有機フッ素化合物、有機塩素系農薬などです。妊娠中のお母さまやお子さまの血液を用いてこれらの化学物質を分析しています。
ポリ塩化ビフェニル、ダイオキシンは、ごみ焼却などの燃焼によって発生することが知られています。有機塩素系農薬は、農薬としてDDT、アルドリン、ディルドリンなどが広く使用されていましたが、土壌や人体への蓄積性が高く、毒性が高いため、現在は世界的に製造や使用が禁止されています。有機フッ素化合物は、撥水撥油の加工製品として、防水スプレーやフッ素加工製品、アウトドア製品などに用いられるほか、消火剤としても用いられており、一部の有機フッ素化合物の使用は世界的に禁止されています。
これらの長半減期化合物は、規制後も環境や体内での蓄積性・残留性が高いため、現在でも環境中や生体内に残存しているため健康への悪影響が心配されています。

社会経済要因

北海道スタディでは、参加者の皆さまにお送りしている質問票で、ご家族の暮らし方や、ご家庭の経済的な状況についてお伺いすることがあります。環境と子どもの健康には無関係な質問だと感じられることもあるかと思いますが、国内外でこれらの社会的環境要因がご家族のライフスタイルを通して、子どもの健康に関連していることが分かってきています。これらを把握することは化学物質等が子どもの健康に与える影響を正確に評価することに役立ちます。すべての子どもが健康に暮らせる未来のために、子どもを取り巻く「環境」の一つである社会的環境要因の質問にも、ご協力いただけますようお願いいたします。

無線通信環境

無線通信は、携帯電話やインターネット、テレビやラジオ放送等、私たちの身近にあり、今日では欠くことのできないものです。近年、携帯電話やインターネットの使用率が大幅に増加し、5G通信も開始するなど、子どもを取り巻く無線通信の環境は大きく変化しています。これらの変化に伴って、無線通信に使用される電波への子どもの曝露も増加していると考えられます。日本では「電波防護指針」というルールにより安全性が確保されており、これまでの海外の研究においても無線通信と健康との関連は報告されていません。しかし、携帯電話の使用時間・方法や、インターネットで利用するコンテンツによる影響も指摘されていることから、無線環境と子どもの健康の関連については慎重に見守っていく必要があります。北海道スタディの調査では、調査票により各ご家庭の無線環境や携帯電話を含む無線機器の使用方法、使用時間についてお伺いしているほか、対面調査に参加してくださった方にお願いをして、電波の個人ばく露測定器による実測調査も実施しています。