調査でわかったこと

妊娠中のプラスチック製品に含まれる「DEHP」子どものアレルギー感染症を増加させる?

私たちが日常的に使用しているプラスチック製品に含まれる「DEHP」という化学物質が、子どものアレルギーや感染症を増加させるのではないかと指摘され始めています。

北海道スタディでこの関係性を調べたところ、お母さんの妊娠中の「DEHP」濃度が高いほど、生まれた赤ちゃんのアレルギーに対する反応性の指標となる免疫グロブリンE(Immunoglobulin E:IgE)レベルが低くなり(図1)、生後から就学時までの食物アレルギー、中耳炎、水ぼうそうにかかる可能性が高くなることがわかりました(図2)。

DEHP(フタル酸-ジ-2-エチルヘキシル)って何?

DEHPは、ポリ塩化ビニル製品やプラスチックを柔らかくするために使用される合成化学物質です。また、化粧品や香料などの日用品にも含有しています。私たちは、このようなDEHPが使用されている日用品に囲まれて過ごしているため健康への悪影響が心配されています。

どうやって調べたの?

北海道スタディに参加する妊娠中のお母様の血液からDEHPの代謝物濃度を測定しました。また、出生時の臍帯血(へその緒の血液)からIgEレベルを測定しました。お子さまのアレルギー/感染症については、1歳半、3歳半、就学時に調査票をご自宅に郵送し回答をいただきました。これらの情報からDEHP代謝物濃度と赤ちゃんのIgEレベル、就学時までのアレルギー/感染症との関連性について調べました。

この研究から言えること

IgEは値が高いほどアレルギー反応が起きやすく、アレルギーに対する反応性の指標となります。妊娠中のDEHP濃度が高いお母さんから生まれた赤ちゃんのIgE値が低いにもかかわらず、その後の就学時までのアレルギーや感染症になりやすくなることは、DEHPが子どもの免疫系のバランスを乱した可能性があります。今後も子どものアレルギーや感染症にどのように影響するのか注意深く観察していく必要があると考えられます。
文責:アイツバマイゆふ

出典:
Ait Bamai Y, et al. Effects of prenatal di(2-ethylhexyl) phthalate exposure on childhood allergies and infectious diseases: The Hokkaido Study on Environment and Children’s Health. Sci Total Environ 2017.