調査でわかったこと

北海道スタディでは国際的な先天異常モニタリング事業では把握できない先天異常も追跡しています

この研究の目的

どの程度の割合で赤ちゃんに先天奇形などの先天異常が発生するのかを調べました。

先天異常とは?

先天異常とは、口唇口蓋裂や停留精巣などの比較的多くみられる異常、ごく稀に発生する中枢神経系などの異常、ダウン症などの染色体異常、など生まれつきに起こる異常です。多くの場合、先天異常が起こる原因は明らかではありません。しかしサリドマイドという薬物による四肢欠損のように、先天異常には薬物や環境要因の関与も疑われています。

先天異常モニタリングとは?

ある集団で先天異常の頻度が異常に増加した場合には、その集団に何らかの原因が発生したことが想像されます。被害を最小に抑えるためには、その原因をいち早く発見することが必要です。そのためには常に発生数を把握しておくことが有効です。国際的には国際先天異常監視機構、日本では日本産婦人科医会先天異常モニタリング、横浜市立大学国際先天異常モニタリングセンターで先天異常の発生症例(妊娠満22週以降、生後7日以内に診断されたもの)の把握が行われています。

どのように調べたの?

道内の37病院の産科で2003-2012年に参加ご協力をいただいた妊娠したお母さん20,805名をひとりひとりフォローしました。このようにある特定の集団についてひとりひとりをある時点までフォローする研究をコホート研究といいます。出産までフォローできた割合は94.1%であり、多くのお母さんにご協力いただくことができました。本研究で数えた先天異常の発生数は、出生時点までに診断され出生時点で主治医が記録したものです。

この研究からわかったこと

出産時点までの先天異常の発生数は妊娠12週以降の出産1000あたり約19でした。前述の国際的な先天異常モニタリングでは対象とならない22週未満での出産でみられた異常もありました。これは本研究の強みである追跡型の研究デザインの成果です。今後、この基礎データをもとにして先天異常発生に影響を及ぼす環境要因について研究を進めたいと考えています。

出典:
Hanaoka T, et al. Prevalence and Risk of Birth Defects Observed in a Prospective Cohort Study: The Hokkaido Study on Environment and Children’s Health.J Epidemiol. 2017 Oct 28.