この研究の背景
近年、環境と子どものアレルギーとの関連が着目されていますが、これまでにお母さんの妊娠中の喫煙と肥満度が子どものアレルギーのリスクを高めるかを、縦断的に検討した研究はこれまでありませんでした。
この研究の目的
北海道スタディでは、お母さんの妊娠中の喫煙と妊娠前の肥満度が子どものアレルギーに及ぼす影響を調べました。子どものアレルギー症状としては、喘鳴(ゼーゼーする呼吸)、湿疹、鼻結膜炎があった割合を年齢ごとに追跡して調査をしました。
どのようにして調べたの?
- お子さまのご両親に、お子さまが1歳、2歳、4歳、7歳の時のアレルギー症状と、その関連因子に関するアンケートに回答していただきました。
- 妊娠中の喫煙については、血液に含まれるコチニン(ニコチンの代謝物)を測定しました。
- 上記の1と2のデータがすべて揃う3296組の親子のペアを解析しました。
この研究が明らかにしたこと
それぞれの年齢において複数のアレルギー症状がある子どもがいることがわかりました。妊娠中の喫煙は、1歳、2歳、および4歳での喘鳴のリスクを上げましたが、7歳ではリスクの関連性は認められませんでした。それとは対照的に、妊娠中のお母さんの喫煙は7歳の湿疹のリスクをむしろ下げる結果となりました。
さらに、お母さんが妊娠する前の肥満度は、お子さんが7歳時の喘鳴のリスクが上がるが、湿疹のリスクは下がる結果となりました。一方、お母さんの喫煙や肥満度と鼻結膜炎との関連はありませんでした。また、お子さまの肥満度とアレルギーとの関連も認められませんでした。
この研究で得られたこと
今回の研究では、妊娠中のお母さんの喫煙や肥満度が、お子さんの喘鳴および湿疹に及ぼす影響は年齢や症状によって異なっていました。何がアレルギーのリスク要因になるのか、その評価を見誤らないためには、1つのアレルギー症状だけに注目するのではなく、さまざまなアレルギー症状について検討する必要があることを示す結果となりました。
文責:荒木敦子
出典:Houman Goudarzi., et al. Contrasting associations of maternal smoking and pre-pregnancy BMI with wheeze and eczema in children. Science of The Total Environment, 639:1601-1609, 2018.