難燃剤ってなに?
難燃剤とは、電化製品から発する熱を抑えたり、カーテンが火災時に燃え広がりにくくするために添加される合成化学物質です。このように室内にある電化製品や家具・内装材の多くには難燃剤が使用されており、私たちは知らず知らずのうちに難燃剤を体内に取り込んでいます。難燃剤による健康への悪影響の一つとして、子どもの喘息や皮膚炎などのアレルギーが報告されています。しかし、どのような住環境が子どもの難燃剤の体内濃度と関連するかについてはまだわかっていません。
なにを調べたの?
本研究では、小学生128名の住宅のハウスダスト中の難燃剤と子どもの尿中に排泄された難燃剤の代謝物濃度を測定し、どのような住環境が難燃剤のハウスダストおよび体内濃度と関連するかを調べました。
なにがわかったの?
小学生128名のほとんど(70~80%以上)の住宅および尿から複数の難燃剤とその代謝物が検出され、大部分の子どもが難燃剤を体内に取り込んでいるということがわかりました。さらにフローリングの床材、床ワックスの使用、室内芳香剤が多い住宅で、子どもの尿中難燃剤の代謝物濃度が高いことがわかりました。また、尿中の難燃剤代謝物濃度が高かった子どもでは、家から採取したハウスダスト中の難燃剤濃度も高濃度でした。
この研究から言えること
難燃剤は、室内の難燃製品から徐々に揮発し、ハウスダストに吸着することが知られています。子どもたちは難燃剤が含まれた製品に囲まれて生活しているため、ハウスダストを介して、これらの難燃剤を体内に取り込んでいるということが本研究より明らかになりました。現在の生活から難燃製品の使用をなくすことは難しいですが、難燃剤が吸着するハウスダストを溜めないよう、換気や掃除などで室内のホコリを極力少なくすることも重要であると言えます。
文責:アイツバマイゆふ
出典:Biomonitoring of organophosphate flame retardants and plasticizers in children: Associations with house dust and housing characteristics in Japan. Environmental Research 172 (2019) 543-551.