調査でわかったこと

妊娠中の喫煙は赤ちゃんの出生体重に影響する?

コチニンって何ですか?たばこの煙との関係は?

たばこの煙中には約4000種類の化学物質が含まれ、この中の一つにニコチンがあります。ニコチンは肝臓で化学構造を変え、主にコチニンになります。コチニンは体内に入ったたばこの煙の量が分かるものとして使われています。

多環芳香族炭化水素とは何ですか?

約4000種類の化学物質のうち、約60種類はがんに関わるものです。そのうちの一つに多環芳香族炭化水素があり、有名ながんに関わる化学物質の一つです。この物質に対して、化学構造の変化のしやすい人としにくい人がおり、個人差があります。またこの物質は、化学構造を変化させた後、ヒトのからだをつくる設計図といわれるDNAと結合し、がん化させることもわかっています。ヒトががんにならないためにDNAとの結合から、DNAを切り離すことがヒトの体内で起こっています。このDNAを切り離しやすい人と切り離しにくい人がいて、個人差があることもわかっています。化学構造の変化のしやすさの違いとDNAの切り離しやすさの違いの組合せによって、妊娠中のお母さんの喫煙による出生体重への影響はどのように変わるのだろうか?そして、これらの違いを示す個人差によって、たばこの煙の量と出生体重との関係に違いがあるのだろうか?ということが分かっていなかったので、調べてみました。

分かったことは何ですか?

調べた結果、化学構造を変化しにくくDNAを切り離しやすいたばこを吸っていないお母さんと比較して、化学構造を変化しやすくDNAを切り離しにくいたばこを吸っているお母さんのお子さんの出生体重は145g小さかったことがわかりました。また化学構造を変化させにくいお母さんと比較して、変化させやすいお母さんのお子さんは、たばこの煙の量が増えるほど出生体重はより小さくなりやすいことがわかりました(図1)。さらに、DNAを切り離しやすいお母さんと比較して、切り離しにくいお母さんのお子さんもまた、たばこの煙の量が増えるほど出生体重はより小さくなりやすいことがわかりました。

この研究からのメッセージとしては?

お母さんの化学構造の変化のしやすさの違いとDNAの切り離しやすさの違いの組合せは、妊娠中のお母さんの喫煙によるお子さんの出生体重に影響することがわかりました。さらに、妊娠中のお母さんの体内に入ったたばこの煙の量が同じであったとしても、お母さんの個人差があるため、お子さんの出生体重に違いがみられることもまた分かりました。化学構造を変えやすいお母さんとDNAを切り離しにくいお母さんから生まれるお子さんは、妊娠中のたばこの煙の量が多いほど、お子さんの出生体重がより小さくなると考えられます。お母さんの個人差は変えられないものなので、お子さんの出生体重に対しては、妊娠中に自分でたばこを吸うことを避けるだけでなく、他人からのたばこの煙を吸うこともまた出来るだけ少なくすることが重要です。

出典:Kobayashi S, et al. Combined effects of AHR, CYP1A1, and XRCC1 genotypes and prenatal maternal smoking on infant birth size: Biomarker assessment in the Hokkaido study. Reprod Toxicol 2016; 65: 295-306.
Kobayashi S, et al. Modification of adverse health effects of maternal active and passive smoking by genetic susceptibility: Dose-dependent association of plasma cotinine with infant birth size among Japanese women-The Hokkaido Study. Reprod Toxicol 2017; 74: 94-103.