調査でわかったこと

胎児がダイオキシン類に曝されると低い濃度でも子どものアレルギー増える?

胎児がダイオキシン類に曝されると低い濃度でも子どものアレルギーが増える?

ダイオキシン類は残留性有機汚染物質(POPs)という化学物質の一種で分解されにくい性質を持ち、環境や体内に長く蓄積するため、日本を含めて世界中で普通に生活するほとんどの人から、低い濃度ですがダイオキシン類を含めたPOPsが検出されます。低い濃度のダイオキシン類が人の健康に影響するかどうかは明らかになっていません。しかし、特に生まれる前の、お母さんの体内にいる胎児は体が未完成で解毒機能も弱いために、化学物質に対して影響を受けやすいことが心配されています。胎児は胎盤やへその緒を介してダイオキシン類に曝され、生まれた後の健康に影響する可能性があります。

北海道スタディは、胎児期にダイオキシン類に曝された影響が、生まれた後のアレルギーに関係するかどうかを調べました。妊娠中のお母さんの血液中ダイオキシン類濃度と、そのお子さんの7歳のアレルギー症状(食物アレルギー、喘息、アトピー性皮膚炎)についてデータを解析したところ、お母さんの血液中のダイオキシン類濃度が高いほど7歳の喘息症状が増えることがわかりました。また、臍帯血中のIgEという免疫の指標もダイオキシン類が高いほど、高くなることがわかりました。

ダイオキシン類って何?

ダイオキシン類は、環境中に広く存在している化学物質で、主にごみを焼却などで発生します。大気中に拡散したダイオキシン類は土や水へ下降して長く留まり、食物連鎖を介して魚介類や生物に蓄積されます。人がそれらを摂取することで、人の体内に蓄積します。ダイオキシン類は、毒性をもつ化学物質ですが日常生活の中で摂取するわずかな量では急性毒性の心配はありません。なお、北海道スタディでご協力いただいた妊娠中のお母さんの血液中ダイオキシン類濃度の測定した平均値は、国内の他地域の平均値よりも低い濃度でした。

この研究から言えること

この研究から、胎児がダイオキシン類に曝されることにより免疫の発達をかく乱して、生後のアレルギー症状を増やす可能性が示されました。これまで高い濃度のダイオキシン類は免疫機能を抑える影響が報告されていましたが、日常生活の低い濃度のダイオキシン類は、子どものアレルギーを増やすかもしれません。

一方で、7歳は免疫機能がまだ発達途中で、今回の研究で見られた影響がどの程度まで確かなのかよく検討する必要があります。一つの研究で結論を得ることは難しく今回の研究は可能性を示したにすぎません。別の集団でも同じ結果が見られるか、アレルギーを増やす影響が思春期や青年期の成長する過程でも見られるか、さらに研究を続けて明らかにする必要があります。
文責:宮下ちひろ

出典:Miyashita C, et al. Prenatal exposure to dioxin-like compounds is associated with decreased cord blood IgE and increased risk of wheezing in children aged up to 7 years: The Hokkaido Study. Science of the Total Environment. 610-611 191-199, 2017.