調査でわかったこと

日本における早産、低出生体重に関係する両親の要因

この研究の目的

わが国では、1980年代から子どもの出生体重の平均値が減少し、早産・低出生体重の割合は10%程度と依然高いままです。早産とは「37週未満の出生」、低出生体重とは「出生体重が2,500g未満」のことを言います。早産・低出生体重で生まれた赤ちゃんは出産直後に感染症や低血糖を起こしやすいだけではなく、将来的に低身長や生活習慣病の発症が増加する可能性が報告されています。そこで、どのような要因が、早産や低出生体重の指標に影響を与えるのかを明らかにして、未来の子どもたちの早産や低出生体重の予防に役立てることを目的としました。

この結果はどうやって調べたの?

2002年から2013年に北海道大規模コーホート「環境と子供の健康に関する研究・北海道スタディ」に登録した妊娠初期の母親・父親の情報と、出産時に医療機関より収集した情報から、早産や低出生体重の指標との関連を検討しました。

※Term-Small for Gestational Age(Term-SGA)とは、正期産(在胎週数37週以降)で生まれた子で、出生体重を赤ちゃんの成長曲線に照らし合わせてみると標準よりも小さいことを表す指標です。今回は成長曲線の下位10%未満をSGAと定義しました。

この研究からわかったこと

「早産、極低出生体重およびTerm-SGAのリスク要因はそれぞれ異なることが明らかになりました」早産とTerm-SGAのリスク要因は母親が妊娠前に低BMI(18.5未満)Term-SGAのリスク要因は母親が妊娠初期に飲酒を続けていること早産・極低出生体重のリスク要因は、母親および父親の年齢が35歳以上、または今回の妊娠で生殖補助医療を実施していたこと

今後の展望

将来の早産、極低出生体重およびTerm-SGAの予防のためには、妊婦の飲酒が赤ちゃんに与える影響や栄養摂取の重要性を、将来親になる子どもたちへ中高生のころから伝えていくことが必要だと考えています。今後は、小さく生まれたお子さんが健康に育つために何が大切かを研究します。

文責:田村菜穂美
出典:Tamura N, Hanaoka T, Ito K, et al. (2018) Different Risk Factors for Very Low Birth Weight, Term-Small-for-Gestational-Age, or Preterm Birth in Japan. Int J Environ Res Public Health 15, 369.