環境健康科学研究教育センターは、学内共同教育研究施設として平成22年4月に設置されました。本センターは、全学の関係者に対してより開かれた組織として、「環境と健康」分野の新しい研究プロジェクト開発と推進、人材育成に資する体制を確実に構築することを目標としています。本センターの設置により、環境と健康に関して、医学研究科と大学院保健科学研究院、大学院教育学研究院などとの間で初めて協力体制が組まれることになります。さらに将来は、食の安全に関わる農学・水産学などの領域、あるいは毒性研究の経験が豊富な獣医学や予防医学で接点の多い歯学、6年制もでき臨床的な接点も多い薬学、あるいは都市計画や水・廃棄物で人間環境系の研究が多い工学や統計解析を専門とする情報系、環境・生命倫理や社会科学など理系文系の他部局との共同研究が増えれば、「環境と健康」に関しては、学内に多様な共同研究・教育を展開する基盤を発展させることができると考えます。
本センターの主たる業務として、研究プロジェクトを推進させることがあります。その一つは柱になるのが、環境省が、2011年から2032年まで国の事業として実施する「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」(以下、「エコチル調査」)です。この他、現在進行中の大きなプロジェクト研究としては、(1)「環境と子どもの健康に関する北海道研究(2001年から実施の2万人規模の前向きコホートで、環境省エコチル研究のモデルになった北海道スタディ)」、(2)室内空気質と健康に関する研究(全国規模のシックハウス症候群に関する大規模疫学研究を実施)、(3)高齢者サポートネットワーク研究などがあります
2005年より北海道大学は「持続可能な開発(Sustainability)」国際戦略本部を設置し、(1)地球温暖化、(2)水の統合的管理、(3)循環型社会の構築、(4)食糧・森林の安定的確保、(5)感染症対策、の5つの代表的な学問領域での研究と教育の高度化と国際社会への成果の貢献に取り組んできました。本センターの設立により、我が国と世界の人々の健康をめぐる課題に真正面から専門的に取り組む、(6)「環境と健康」が新たな領域として加わることになります。本センターの活動は、多様な共同研究や教育を展開させる基盤となり、将来的には、国内外の「環境と健康」領域のリーダー的な役割を果たすことができるだろうと考えています。