妊婦が喫煙したり、タバコ煙を吸ったりすると、生まれてくる赤ちゃんの健康に悪影響があるの?

この研究の背景

在胎不当過小児(SGA、在胎期間相当よりかなり小さく生まれた赤ちゃんの状態)は、幼児期の成長と神経発達の遅れ、および、小児期の肥満とメタボリックシンドロームのリスク上昇に関係があると言われています。SGAのリスク要因の一つに、妊婦さんの能動喫煙(喫煙者であるお母さん自身がその煙を吸い込むこと)がありますが、妊婦さんの受動喫煙(非喫煙者であるお母さんが自らの意思と無関係にタバコの煙を吸い込むこと)とSGAの関係については一致した見解が見られていません。また、コチニン(ニコチンの代謝物質)は、受動喫煙と能動喫煙を検証するためのバイオマーカー(生体内の生物学的変化を把握するための指標)ですが、コチニン濃度とSGAの関係を調べた報告はほとんどありません。

この研究の目的

北海道スタディでは、満期産と早産に分けて、妊娠中のお母さんのコチニン濃度とSGAとの関係を調べました。さらに、この研究で設定したカットオフ値(または、境界値)を使い、妊娠中のお母さんのコチニン濃度とSGAの関係を調べました。

どのようにして調べたの?
  1. 15198組の母児ペアを対象に研究が行われました。
  2. 妊娠中のお母さんの血液中にあるコチニンの濃度を測定しました。
  3. コチニン濃度のカットオフ値を決定するために、ROC曲線(縦軸を感度、横軸を特異度とし、両者の関係を曲線にしたもの)を使った解析を行いました。
この研究が明らかにしたこと

SGA児は、192人(1.3%)でした。SGA児と他の幼児を区別するコチニン濃度のカットオフ値は、全体と満期児(母子ともにリスクが少なく理想的な出産時期に生まれた赤ちゃん)において、いずれも3.03ng/mLでした。妊婦さんのコチニン濃度が3.03ng/mL未満だった赤ちゃんに比べ、3.03ng/mL以上の赤ちゃんではSGAに対するオッズ比(ある事象の起こりやすさを2つの群で比較すること)が上昇しました。コチニン濃度が3.03ng/mL以上である妊娠中の受動喫煙者と、コチニン濃度が11.48ng/mLよりも高い能動喫煙者では、SGA児を生むリスクがほとんど同じでした。

この研究で得られたこと

今回の研究では、受動喫煙と能動喫煙の両方が、SGAの重要なリスク因子であることがわかりました。また、妊婦さんの血液中のコチニン濃度が3.03ng/mL以上の場合、SGAのリスク上昇と関係することもわかりました。こうした結果は、たとえ赤ちゃんが臨月で生まれたとしても、赤ちゃんの健康上に悪影響を及ぼすため、産前教育の際に、妊娠中の受動喫煙と能動喫煙を避けるよう教育することが大切であることを示す結果となりました。

出典:
Sumitaka Kobayashi, Fumihiro Sata, Tomoyuki Hanaoka, et al., Association between maternal passive smoking and increased risk of delivering small-for-gestational-age infants at full-term using plasma cotinine levels from The Hokkaido Study: a prospective birth cohort. BMJ Open 2019;9:e023200.

(2020 IF: 2.692)