妊娠12週から22週未満で出産しても、元気な赤ちゃんで生まれてくれるのかな?

この研究の背景

世界保健機関(WHO)が主導となり誕生した国際先天異常調査研究機構 (ICBDSR)は、1957年に発生した「サリドマイド児」のような歴史的悲劇を繰り返さないことを目的に、世界的規模の情報交換システムとして構築されました。しかし、ICBDSRのリストにない出生異常や妊娠22週未満の情報など、公表されている出生異常の有病率(ある時点で、何らかの出生異常を持って生まれてきた赤ちゃんの割合のこと)に関する情報だけでは十分とは言えません。

この研究の目的

北海道スタディでは、妊娠12週以降の出生異常のデータを集めました。また、ICBDSRのリストにある出生異常とICBDSRのリストにない出生異常を比較し、両者の違いを分析しました。

どのようにして調べたの?
  1. 2003年から2012年までに北海道内の病院で受診し、経過観察が終了した妊婦さん19244人が対象でした。
  2. 環境化学物質(残留農薬が混入した食物などのこと)への曝露に関連するといわれる55種類の出生異常を含む、妊娠12週以降のすべての出生異常を記録しました。
この研究が明らかにしたこと

出生異常の有病率では、1000人の赤ちゃんの誕生に対し18.9人の赤ちゃんに何らかの出生異常が見られました。妊娠12週から21週までの出生異常の有病率は、出生異常全体の約10分の1でした。神経系に先天性奇形を持った赤ちゃんが生まれる割合は、妊娠21週までの出産で39%でした。無脳症や脳へルニアのすべての赤ちゃんが、妊娠21週までに生まれました。出生異常に関する症例については、ICBDSRのリストにある出生異常の場合、早産のリスク上昇と関連がありましたが、ICBDSRのリストにない出生異常の場合では、満期産児でも小さな赤ちゃんが生まれるリスク上昇と関連がありました。

この研究で得られたこと

今回の研究で、我々が分析したデータが、ICBDSRに含まれていない部分を補足していることがわかりました。ICBDSRで公表されていない出生異常の症例についても、出生異常の原因を明らかにするために、分析が必要であることを示す結果となりました。

出典:
Tomoyuki Hanaoka, Naomi Tamura, Kumiko Ito, et al., Prevalence and Risk of Birth Defects Observed in a Prospective Cohort Study: The Hokkaido Study on Environment and Children’s Health. J Epidemiol 2018;28(3):125-132.

(2020 IF: 3.211)