妊婦がダイオキシン類へ曝されると、42月後の子どもに影響があるの?

この研究の背景

ダイオキシン類は、魚介類の摂取や焼却炉による大気汚染などを介し、人体に悪い影響を及ぼすと考えられている環境化学物質です。妊娠中のお母さんがダイオキシン類に曝されると、子どもの神経発達に影響が出ると言われています。しかし、こうした影響がどのぐらいまで続くかは明らかになっていません。

この研究の目的

今回の研究では、ダイオキシン類が子どもの*認知機能の発達に与える悪い影響が、生後42カ月経っても見られるのかどうかを、男女差を含めて調査しました。

*認知機能:外からの情報を選び記憶して、理解や推測し、応用できる能力

どのようにして調べたの?
  1. 妊娠中のお母さんの血液からダイオキシン類の濃度を測定しました。
  2. 生後42か月の時点で、お子さまの認知機能の発達とお母さんの知能レベルを評価しました。
  3. 上記の1と2のデータがすべて揃う141組の母児ペアの解析をしました。
この研究が明らかにしたこと

生後42か月の子どもの認知機能の発達を評価するために、K-ABCという検査を行ったところ、ダイオキシン類と子どもの習得度(過去に習得した知識や技能の応用を測定するテスト)の関係では、女の子に強い*正の相関が見られました。しかしこれは、ダイオキシン類が直接関与して影響を与えたものではないかもしれません。また、ダイオキシン類とお子さまの認知処理得点(総合的な知能測定を行うテスト)の関係では、男の子に*負の相関が見られましたが、女の子には見られませんでした。

*正の相関:一方が増えると、他方も増えること *負の相関:一方が増えると、他方が減ること

この研究で得られたこと

ダイオキシン類の胎内曝露が、生後6カ月の子どもの認知機能の発達に及ぼしたような悪い影響は、生後42か月の子どもには見られませんでした。しかし、認知処理能力において、生後42か月の男の子に悪い影響が見られました。したがって、ダイオキシン類の胎内曝露の影響は、認知処理能力において男女差があることを示す結果となりました。

出典:
Tamiko Ikeno, Chihiro Miyashita, Sonomi Nakajima, et al., Effects of low-level prenatal exposure to dioxins on cognitive development in Japanese children at 42 months. Science of the Total Environment 618 (2018) 1423–1430.

(2020 IF: 7.963)