母さんの血液に含まれるPCB類が赤ちゃんの飲む母乳にも・・・

この研究の背景

ポリ塩化ビフェニール類(PCDDやPCDF、ダイオキシンなどのPCB類)は、なかなか分解しない環境汚染物質で、食べ物を介して体内に溜まっていくことが分っています。実際、90%を越える人の血液からPCB類がみつかっています。妊産婦でも、体内にPCDDやPCDF、ダイオキシン類、PCBなどが蓄積していて、妊娠期間中は胎盤を通して胎児へ、さらに、出産後は母乳を通して赤ちゃんの身体に入っていることが報告されています。

しかし、これまでのところ、お母さんの血液中にあるPCB類がどの程度、母乳に含まれているかは十分に分っていません。

この研究の目的

日本人の妊婦さんを対象に、お母さんの血液中のPCDDやPCDFs、ダイオキシン類PCB、非ダイオキシン類PCBなどの量と、赤ちゃんが飲む母乳に含まれているそれらの量の間の関連性を検討することです。

どのようにして調べたの?
  1. 2002年~2005年の札幌において、初産婦さんを対象に研究を行いました。
  2. 妊婦さんから血液と母乳の両方を採取して、それらに含まれているPCB類の量を調べました。
  3. 母乳は、赤ちゃんが生まれた28~30日後に採取しました。
この研究が明らかにしたこと

札幌に住む119名の妊婦さんから血液と母乳の両方を調べたところ、全ての妊婦さんで、PCDDやPCDFs、ノンオルトPCB、モノオルトPCBなどのPCB類が血液だけでなく母乳でも検出されました。平均すると妊婦さんの血中のPCB類の量は母乳中よりも多く、母乳の4.3倍~9.8倍の数値を示していました。血中のPCB類の量が多い妊婦さんでは、それに比例して母乳中のPCB類の量も増えていて、血中と母乳中のPCB類の量は明らかな比例関係にありました。

この研究で得られたこと

お母さんの血液中にあるPCB類化合物の多くが、母乳中にも含まれていることが解りました。
今回の結果より、多種類のPCB類化合物をそれぞれ測らなくとも、hexaCB-153という人の血液中で比較的高い割合でみつかるPCBがPCB類化合物の総量を示す良い指標になっていることが分りました。さらに、授乳中の幼児において今後検討する必要のある最も重要なPCBは、母乳中に多く含まれているモノオルトPCB類だと考えられます。

 

出典:
Takashi Todaka, Hironori Hirakawa, Jumboku Kajiwara, et. al., Relationship between the concentrations of polychlorinated dibenzo-p-dioxins, polychlorinated dibenzofurans, and polychlorinated biphenyls in maternal blood and those in breast milk, Chemosphere 78 (2010) 185–192.

(2020 IF: 7.086)