環境と健康ひろば

働く人々の心身の健康

わが国では職域の健康診断の対象は1000 万人以上に昇り、かつ労働安全衛生法のもと毎年膨大なデータが蓄積されています。しかし、心電図検査などは予防医学的効果が疑問視されており、どのような健診が労働者の健康管理と疾病予防に真に有効かを検討する必要があります。本研究では、虚血性心疾患や脳血管疾患など循環器疾患を中心とした生活習慣病の様々な危険因子について検討を行い、健診現場で活用することを目的に、職域における大規模前向きコホート研究による疫学的検討を行っています。

前向きコホート研究は、3自治体職員、1運輸会社の約9000 人を対象に開始されました。2003 年度にベースライン調査を実施し、2008 年度まで追跡調査を行いました。ベースライン時には、1 自治体について健診時に動脈の脈波測定(PWV)を行い、現時点の脈波から推定される動脈の硬さと危険因子の関係についての横断的な研究を行いました。また脈波のその後の動脈硬化性疾患発症の予測因子としての役割を縦断的に検討する予定です。

その他の危険因子については、介入可能な危険因子である喫煙、高血圧、肥満、耐糖能異常、高コレステロール血症、高トリグリセライド血症、低HDL 血症、職業性ストレス、不眠(アテネ不眠調査票)を要因として評価し、さらに新しい危険因子として注目されている感染因子(高感度CRP、ヘリコバクター・ピロリ感染等)についても検討を行います。職業ストレスの評価は要求度—コントロールモデル、努力—報酬不均衡モデルの2 つの尺度を用いて検討を行います。特に職域における生活習慣病、メタボリックシンドロームや動脈硬化性疾患と職業ストレスの関連、VDT 作業と睡眠時間、職種とストレスの関連について検討を行っています。

以上のように、働く人々について、ストレスも含めた生活習慣病危険因子について、どのように発症に関係しているかを疫学的に明らかにし、さらに今後の予防対策に役立てることをめざしています。

 

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2013年9月2日 更新

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