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アジアにおける研究連携(Birth Cohort Consortium of Asia: BiCCA)

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    世界の子どもたちの半分はアジアに住んでいます。アジアの国々は世界的に見て工業化が最も急速に進んでいる地域であり、環境による子どもたちの健康への影響が懸念されています。この論文では、アジアにおける出生コーホートの重要性、規模による特徴を論じています。

    ところで、「出生コーホート」とはどんな研究のことを言うのでしょうか?ある一定期間内に研究への参加協力が得られた妊婦さんについて、妊娠中の環境や、生まれた子どもたちの成長を追っていく調査です。胎児期の環境がその後、子どもたちの健康や発達にどのように影響するか、あるいは病気のかかりやすさなどを明らかにすることができる研究方法です。2000年代に入って、アジアではいくつかの出生コーホート研究がスタートし、現在は16カ国、31の出生コーホート研究が進められています。各コーホートには、小さいもので100-200名、大きいものでは20,000-30,000名の妊婦さんが参加しています。日本や韓国では国家プロジェクトとして100,000人以上が参加している出生コーホートもあります。

    参加者が514名の札幌の出生コーホートからは、胎児期にダイオキシン*1にさらされると、その量は比較的低いレベルであっても出生時体格、神経発達、免疫系、ホルモン環境を変化させることがわかりました。また、2万人以上の妊婦さんが参加している北海道コーホートには一定数の先天異常のお子さんが含まれます。また、有機フッ素化合物*2に胎児期にさらされるとアレルギーは減るものの感染症にかかるリスクがあがり、免疫応答を低下させる作用がある可能性を示しました。参加者の人数が比較的小さい出生コーホートは、世界に先駆けて難しい課題にチャレンジしやすいという利点があります。一方、より規模の大きな出生コーホートにおいては、例えば先天異常など発症頻度の低い病気について調査できるという利点がありますが、研究の推進には多額な費用と人的資源を必要とします。従って、1つの大きなコーホートだけですべての研究を行うことが、必ずしも最善の戦略でないといえます。アジアの出生コーホート間で連携することは、より大きな人数での解析を可能にするとともに、様々なばく露、民族、社会経済状況による健康影響を明らかにできる点でも重要です。私たち北海道スタディではアジアの出生コーホートコンソーシアム*3(Birth Cohort Consortium of Asia: BiCCA)を設立し、アジアにおける連携協力を進めています。

    *1 ダイオキシンは農薬の製造過程における不純物、また、特にプラスチックが燃焼する過程で生成される化学物質です。微量でも強い毒性があります。分解されにくい性質を持ち、一度環境中に拡散させると、長く土壌や湖沼や海の底泥に蓄積していきます。
    *2 撥(はっ)水(すい)・撥(はつ)油性(ゆせい)があり、熱や化学的に安定であることから、撥水撥油剤、界面活性剤、半導体用反射防止剤、水成膜泡消火剤、および調理用器具のコーティング剤等の幅広い用途で使用されてきました環境中で分解されにくく、残留性や生物蓄積性を示すことから、主要化合物であったPFOSとPFOAという物質は規制対象になりましたが、その他にも炭素鎖の長さが異なる複数の化合物がふくまれます。
    *3 「提携、共同、団体」を意味するラテン語が語源で、2つ以上の企業、団体、政府等が共同で何らかの目的に沿った活動をおこなう。

    出典:R. Kishi, et al., Birth cohorts in Asia: The importance, advantages, and disadvantages of different-sized cohorts. Science of the Total Environment, 615, 1143-1154, 201

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