この研究の背景
妊娠中のお母さんの喫煙が、ADHD(注意欠陥・多動性障害)など、子どもの神経発達障害に影響を及ぼすと言われています。しかし、非喫煙者であるにもかかわらず、妊娠中にお母さんがタバコの煙に暴露された場合の健康への影響は、十分に研究されておらず、特に、ADHDとの関連性については、その研究成果に一貫性がありません。
この研究の目的
北海道スタディでは、前向き出生コホート研究(妊娠届時から親子を追跡調査し、健康などの変化を観察すること)をもとに、妊娠後期のお母さんの血中コチニン(ニコチンの代謝物)濃度と就学前の子どものADHDの症状との関係について調べてみました。
どのようにして調べたの?
- お子さまのご両親に、お子さまの問題行動の有無に関するアンケートに回答していただきました。
- 妊娠中の喫煙について、お母さんの血液に含まれるコチニンを測定しました。
- 上記1と2のデータがすべて揃う3216組の親子ペアを解析しました。
この研究が明らかにしたこと
「全般的困難度」と「ADHDの症状」を持った子どもは、女の子よりも男の子の方がたくさんいました。コチニンが最低濃度の非喫煙者と比較すると、コチニンが低濃度および高濃度の受動喫煙者と最高濃度の能動喫煙者の方が、「行為面の問題」と「ADHDの症状」を持った子どもがたくさんいました。能動喫煙は、「全般的困難度」および「多動・不注意」のリスク上昇に深く関与していました。コチニンが低濃度および高濃度の受動喫煙は、「多動・不注意」のリスク上昇に関与していました。「全般的困難度」のリスク上昇と能動喫煙が関与していたのは、男の子だけでした。「多動・不注意」のリスク上昇と、低濃度および高濃度の受動喫煙と能動喫煙が関与していたのも、男の子だけでした。
この研究で得られたこと
今回の研究では、妊娠中の能動喫煙が、子どもの「全般的困難度」および「多動・不注意」のリスク上昇に貢献する可能性が示されました。妊娠中のお母さんは喫煙を止めて、タバコの煙に曝されることがないようにすべきであることを示す結果となりました。
出典:Machiko Minatoya, Atsuko Araki, Sachiko Itoh, et al., Prenatal tobacco exposure and ADHD symptoms at pre-school age: the Hokkaido Study on Environment and Children’s Health. Environmental Health and Preventive Medicine (2019) 24:74.