この研究の背景
ビスフェノールA(BPA)は、哺乳瓶などのポリカーボネート製プラスチックや、缶詰の内側をコーティングするエポキシ樹脂として幅広く使用されています。また、フタル酸エステル類は、食品パッケージや玩具など一般的に使用されています。妊娠中のお母さんが、BPAやフタル酸エステル類に暴露されると、おなかの赤ちゃんがやがて、不安やうつ、非行や多動性などの問題行動を起こす可能性が指摘されています。しかし、評価ツールや子どもの年齢が研究ごとに異なるため、一定の見解が得られていません。
この研究の目的
北海道スタディでは、妊娠中のお母さんのBPAとフタル酸エステル類の代謝物の血中濃度を測定し、それらの数値と、おなかの赤ちゃんが5歳に成長したときの問題行動との関係性を調べました。
どのようにして調べたの?
- 妊娠初期のお母さんの血液に含まれるBPAとフタル酸エステル類の代謝物の濃度を測定しました。
- おなかの赤ちゃんが5歳になったとき、お子さまのご両親に、小児期のメンタルヘルスに関するアンケートに回答していただきました。
- 上記の1と2のデータをもとに、458人のお子さまの解析を行いました。
この研究が明らかにしたこと
アンケート結果をもとに、子どもを、“問題行動が見られなかった”、“問題行動が見られた”、“どちらともいえない”の3つのグループに分類しました。BPAと検出率が高かった4つのフタル酸エステル類の代謝物(MnBP、MiBP、MEHP、MECPP)において、妊娠中のお母さんの血中濃度では、3つのグループ間で差が見られませんでした。その一方で、問題行動を引き起こすリスク上昇との関連性が見られたのは、MECPPでした。女の子においては、MECPPと活動過多・不注意を引き起こすリスク上昇との関連性も見られました。
この研究で得られたこと
この研究では、妊娠中のお母さんのBPAおよびフタル酸エステル類の代謝物の血中濃度と、そのお母さんから生まれた未就学児の問題行動に関連性が見られませんでした。しかし、妊娠中のお母さんのMECPPの血中濃度が、子どもの問題行動を引き起こすリスク上昇に関連している可能性を示唆する結果となりました。
出典:Machiko Minatoya, Sachiko Itoh, Keiko Yamazaki, et al., Prenatal exposure to bisphenol A and phthalates and behavioral problems in children at preschool age: the Hokkaido Study on Environment and Children’s Health. Environmental Health and Preventive Medicine (2018) 23:43.