無線環境と子どもの健康

概要

北海道大学環境健康科学研究教育センター
特任講師 山﨑 圭子

近年、子どもたちの身の回りで使われる電子機器は増加しています。特に携帯電話に使われている3G、4G、5G等の電波は、非常に身近なものとなっています。子どもたちの健康状態、中でも、ものを考えたり覚えたりする能力である認知機能にその影響がないかどうかについて、しっかりと確認しておく必要があると考えています。

とはいえ、これまでの国内外での研究では、電波が人間の体に影響を及ぼすという結果は確認されていません。また、日本では「電波防護指針」により、安全な電波の使用が義務付けられています。しかし、近年ではインターネットへの依存症などが増えているとの報告もあるため、電波に限らず、携帯電話等の電子機器の使用方法と子どもの健康の関連について、注意深く見守っていく必要があります。

調査方法

調査方法は大きく分けて2つです。1つ目は質問票による調査で、「家でインターネットを使うか」「子どもが自分自身の携帯電話を持っているか」など、お子さんの身の回りの無線環境や携帯電話の使い方を回答してもらいました。また、お子さんの行動傾向や生活の質、睡眠の状態などの健康状態についても答えていただきました。1回目の質問票調査は2019年から2020年にかけて行い、送付した1万2千人のうち6割を超える方から回答をいただきました。

2つ目として、対面による詳細な認知機能の調査を継続して実施中です。小学生のお子さんには簡単な認知機能検査を測定させてもらうとともに健康状態を調べる医学的検査を、中学生のお子様には脳波測定にご協力いただいています。

小学生のお子さんを対象に、簡単な認知機能検査と医療機関での医学的検査を実施します。
脳波測定により、画面を見ながら簡単なゲームをしているときの脳活動を記録します。

これらの対面調査では、お子さんの身の回りの無線環境も測定してもらっています。対面調査の後に専用の測定機器をお渡しし、身に付けてもらった状態で3日間の測定を行います。測定中の行動記録表を記入してもらうことで、時間や場所ごとの無線環境を調べることができます。

子どもたちに身につけてもらった電波測定機器と行動記録例

今後の研究について

今後、これまでに質問票および対面調査で収集させていただいたデータから、無線環境や携帯電話・インターネットの使い方と子どもの健康の関連を調べていきます。子どもをとりまく無線環境は速いスピードで変化しつづけているため、数年にわたって複数回の質問票調査をすることが必要となります。さらに、追加の対面調査として中学生以上のお子さんを対象とした知能の測定も計画中です。質問票や対面調査のご案内が届いたら、ご協力をいただけますよう、お願いいたします。

参考文献

キーワード
携帯電話、電波、認知機能