環境と健康ひろば

環境と子どもの健康に関する北海道研究;先天異常・発達・免疫アレルギー

 

2001年から立ち上げた「環境と子どもの健康に関する北海道研究(以下北海道スタディ)」は,道内37カ所の病院産科の協力を得て2万人の妊婦さんに登録いただいた「北海道大規模コーホート」(以下北海道大規模コーホート)と「札幌市内1産科病院コーホート」(以下札幌コーホート)の2つのコーホートから成っています。妊娠中の環境化学物質曝露が胎児期および小児期に与える健康影響を明らかにするための研究で母体血および臍帯血のPCBs・ダイオキシン類などの環境化学物質曝露による先天異常,児の発達や免疫アレルギーへの影響を調査しています。

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図1 北海道大規模コーホートの時系列の流れ(クリックすると拡大されます)

 

大規模コーホートでは登録数が2万人を超え、初期に登録した妊婦さんのお子さんは7-8歳になりました。そこで、幼児期には確定診断がつかなかった疾患・発達障害やアレルギーや軽度な発達障害(ADHDなど)の発症リスクの解明を目的とした研究をすすめています。今後思春期まで追跡の予定です。

 

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図2 札幌コーホートの時系列の流れ(クリックすると拡大されます)

 

札幌コーホートは,胎児期曝露として母体血中のダイオキシン/PCB,有機塩素系農薬,有機フッ素化合物,ビスフェノールAなどの分析を実施し,次世代の子どもへの影響について,発達の詳細な検査により評価しています。

2012年には登録妊婦が20,823名に達し,先天異常総数は368名でした。本研究による先天異常数把握は,わが国で初の地域ベースによる貴重なデータです。これまでの主な成果は、

 

1.PCBs・ダイオキシン類が胎児発育に及ぼす影響では,母体血中異性体29種のうち内特定の異性体濃度が高いと,特に男児で出生時体重や臍帯血中総IgE量の低下,生後18か月の感染症発症増加が認められました。

2.有機フッ素化合物(PFCs)について,2003年から2011年について母体血中濃度の経年変化を検討し、POPs条約で規制がとられた後のPFCsレベルの近年の基礎的動向データを初めて示しました。出生時体重に与える影響では,炭素鎖の長いPFNA曝露のレベルが高いほど出生時体重と出生時身長が有意に低く,男児に影響が強く表れることを明らかにしました。

3.葉酸代謝遺伝子5,10-MTHFRに係わる代謝酵素遺伝子多型と喫煙が出生時体重に及ぼす影響を分析した結果,5,10-MTHFR遺伝子多型のハイリスク群では,喫煙の影響が強く表れることが明らかとなりました。

 

なお,本センターが取り組む研究テーマ「化学物質をはじめとする環境要因の人へのリスク:特に次世代影響の解明」は,世界レベルでみて北海道大学に優位性がある研究テーマとして全学的に選定されています。

 

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2013年9月2日 更新

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