環境と健康ひろば
北海道スタディ

2013年9月6日

水酸化PCB(OH-PCB)の濃度について

【研究目的】

水酸化PCB(OH-PCB)はPCBの代謝物で、生体内でシトクロム450による水酸化を受けることで形成される。OH-PCBには800種類以上の異性体が存在し、また低塩素化PCBは、高塩素化PCBと比較して代謝されやすいと言われている。よって、異なる種類のPCBの曝露により、生体内に異なる種類のOH-PCBが存在することとなる。
これまでの研究で、PCBの人間に対する健康被害が明らかになったが、それらはOH-PCBによって引き起こされた可能性がある。そこで今、OH-PCBの研究が必要とされている。

【北海道スタディにおけるOH-PCB濃度】

この表は、我々の研究におけるPCB、OH-PCBの濃度とその比を過去の研究の値とで比較したものである。

2-2_表1
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我々の研究(No.1)におけるPCBの血清中濃度は、ヨーロッパ諸国の血清中濃度と比較して非常に低く(No.3、5、7、8)、インド、日本の柏市の研究よりやや高い値であった(No.2、6)。一方、OH-PCBの血清中濃度とOH-PCB/PCB比は、これらの研究内で最も低い値であった。この原因として、我々の研究における参加者グループでは、生体内のPCB代謝能力が低い可能性が考えられる。
これまで、PCBやOH-PCBの代謝経路についてはほとんど研究されていない。上記より、この研究はPCBとOH-PCBの代謝に個々の遺伝子多型が関与している可能性を明らかにし、PCB、OH-PCBの代謝経路の解明することを目標としている。

【妊娠中のOH-PCB曝露と甲状腺ホルモン】

OH-PCBは甲状腺ホルモンによく似た構造を有し、甲状腺ホルモン輸送タンパク(TTR)への強い親和性を持つ。OH-PCBがTTRと甲状腺ホルモンの結合を競合的に阻害することで、甲状腺ホルモン恒常性を破壊すると言われている。これまでの研究から、OH-PCBのTTRへの結合力は、甲状腺ホルモンやPCBのTTRへの結合力より強固であることが明らかになっている(Ucan-Marin et al. 2010)。

また、OH-PCBは胎盤を通過する(Covaci et al. 2002; Gomara et al. 2007)。過去の研究では、妊婦の血中と臍帯血中のPCB、OH-PCB濃度を測定し、OH-PCBとPCBの割合を出すことで胎盤透過性を調べた結果、OH-PCBはPCBより強い胎盤透過性を有する結論が出ている(Kawashiro et al. 2008; Park et al. 2008)。このことは、OH-PCBが胎児へ影響をもつことを意味している。

我々の研究では、妊娠中のOH-PCB曝露が、母児の甲状腺ホルモンへどのような影響を与えるかを検討していく。

2013年9月6日 更新 キーワード:, ,

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