親の社会経済的地位と赤ちゃんがSmall for Gestational Age生まれることの間に関与しているものは何ですか?

この研究の背景

Small for Gestational Age (SGA)とは、赤ちゃんが在胎週数妊娠期間相当の体重よりもかなり小さく生まれたことを指します。SGAは、新生児や乳児期だけでなく、生涯を通じて、神経系、代謝系、心血管系など、その人の健康に深刻な影響を与える可能性があると言われています。SGAのリスク因子として、親の教育水準や世帯収入などの社会経済的地位(SES)が挙げられますが、親のSESがSGAに直接関係しているとは考えにくく、何らかの中間因子を通じて間接的に影響を与えていると考えられています。しかし、中間因子の構造とその効果については、明らかになっていません。

この研究の目的

北海道スタディでは、年齢、妊娠前のBMI(体格指数)、喫煙、飲酒などの親のリスク要因が、親のSESとSGAとの関係において、中間因子として関与しているかどうかを調べました。

どのようにして調べたの?
  1. 赤ちゃんがお腹にいるときに、ご両親に自身の特徴に関するアンケートに回答していただきました。
  2. SGAは、妊娠回数、在胎週数、性別ごとの出生時体重を参考に、10パーセンタイル値未満の出生時体重と定義しました。
  3. SGAに対する親のSESの効果を媒介する中間因子を調べるために、中間要因の間には関連がないものとしたモデル1と、中間要因の間にも関連があるものとしたモデル2を用いて分析しました。
この研究が明らかにしたこと

全参加者14593人の単胎児(一人で生まれてきた子ども)中1011人がSGAでした。親のSESが低いこととSGAとの関係における両者間の中間因子は、妊娠後期のお母さんの喫煙、妊娠前のお母さんのBMI、妊娠初期の飲酒でした。モデル1において、その中で、SGAへの直接的な影響が最も大きかったのは妊娠前のお母さんのBMIでした。SGAへの間接的な影響が最も大きかったのは、妊娠後期のお母さんの喫煙でした。モデル2では、親のSESが低いことは、妊娠後期のお母さんの喫煙を媒介し、結果としてSGA増加につながりました。また、妊娠後期のお母さんの喫煙はおそらく妊娠前から続いているため、お母さんの妊娠前のBMIが低いお母さんの割合の増加に影響していて、その影響がSGAの増加にも及びました。

この研究で得られたこと

今回の研究では、妊娠前のお母さんのBMIと妊娠後期の喫煙が、親のSESとSGAを媒介する中間因子であることを確認しました。例えば、学校教育の段階から、喫煙が健康に与える影響や適切な食事摂取のようなテーマを取り扱うことで、さらに未来の子どものSGAを減らせるのではないかと考えています。

出典:
Naomi Tamura, Tomoyuki Hanaoka, Kumiko Ito, et al., Mediating Factors Between Parental Socioeconomic Status and Small for Gestational Age in Infants: Results from the Hokkaido Study on Environment and Children’s Health. Matern Child Health J. 2021 Apr;25(4):645-655.

(2020 IF: 2.276)