炭素鎖の長いパーフルオロアルキル化合物に妊婦が曝されると、赤ちゃんに何が起きるの?

この研究の背景

パーフルオロアルキル化合物(PFAS)は、発砲スチロール、食品包装紙など、工業製品や商業製品に広く利用されています。PFASは、飲料水や肉魚などの食品、家庭のホコリなどを介し、人体に侵入することがわかっています。特に、妊娠中のお母さんの場合、PFASが母体の血液から胎盤関門を通り、臍帯血に輸送されることがわかっているため、発達中のおなかの赤ちゃんに及ぼす影響が懸念されています。一方で、日本人を含むアジア人は、欧米人に比べ、炭素鎖(炭素原子間の結びつきのこと)の長いPFASの血中濃度が高いという報告があります。しかし、妊娠中のお母さんの炭素鎖の長いPFASへの曝露と赤ちゃんの出生体重との関連を報告した研究はありません。

この研究の目的

北海道スタディでは、新生児の出生時体重を測定し、妊娠中のお母さんが11種類のPFAS、特に炭素鎖の長いPFASに曝された場合の、おなかの赤ちゃんの影響について調べました。

どのようにして調べたの?
  1. お母さんの血液から11種類のPFASの濃度を測定しました。
  2. お母さんと赤ちゃんの情報(出生時体重など)は、医療記録やアンケートから入手しました。
  3. 上記2と3のデータをもとに、1985組の母児ペアを解析しました。
この研究が明らかにしたこと

お母さんの血液から検出された11種類のPFASのうち、最も高い濃度を示したものがペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)(3.4ng/mL)、続いてペルフルオロオクタン酸(PFOA)(2.0ng/mL)でした。パーフルオロノナン酸(PFNA)とパーフルオロデカン酸(PFDA)では、出生時体重との関係において、両者の濃度が10倍増えるたびに、赤ちゃんの体重が減少しました。また、このような関係は、出産経験のあるお母さんに、よりはっきりと見られました。PFNAでは、すべての赤ちゃんの出生時身長との関係において、出生時体重と同様な関係が見られました。女の子の赤ちゃんにおいては、PFTrDAと出生時体重の間に同様な関係が見られました。

この研究で得られたこと

今回の研究では、PFOSとPFOA以外の炭素鎖の長いPFASの使用が今後どんどん増えるようになれば、これらの物質に曝露される人々の数も増える可能性があり、その結果、特におなかの赤ちゃんの成長において、有害な影響が及ぼされることを懸念する結果となりました。

出典:
Ikuko Kashino, Seiko Sasaki, Emiko Okada, et al., Prenatal exposure to 11 perfluoroalkyl substances and fetal growth: A largescale, prospective birth cohort study. Environment International 136 (2020) 105355.

(2020 IF: 9.621)