妊娠中のお母さんの喫煙は、就学前の子どもの協調運動の問題に関連する危険因子でした

この研究の背景

体のいろいろな部分における別々の動きをひとつにまとめて動かす運動を協調運動といい、ボールを投げる、文字を書くなど日常生活における様々な場面で見られる運動です。協調運動に問題があると、正確にボールを投げられない、文字をうまく書けないなど運動のぎこちなさや不器用といった状態としてあらわれ、こうした状態が、日常生活を大きく妨げる場合、国際的な診断基準に基づき、発達性協調運動症(DCD)と診断されます。DCDの症状は、青年期以降も続くことが多く、しかも、精神・身体合併症を引き起こすため、早期介入が必要です。しかし、日本において、子どものDCDの有病率(ある時点の、ある人口集団で、特定の病気にかかっている患者の比率のこと)や、危険因子を調べた研究はほとんどありません。

この研究の目的

北海道スタディでは、日本の就学前の子どもを対象に、協調運動の問題に関連する出生前の要因について調べてみました。

どのようにして調べたの?
  1. お子さまのご両親に、お子さまが5歳になったとき、日本語版の発達性協調運動障害症の評価のための質問票(DCDQ-J)に回答していただきました。
  2. 2008年4月から2011年11月までに生まれた4851人のお子さまのデータを解析しました。
この研究が明らかにしたこと

4851人に質問票をお送りしたところ、3402人からご回答いただき、そのうちDCDQ-Jに全て回答いただいた3369人を研究対象としました。対象となった子どもの平均月齢は64.1カ月で、男の子が1701人、女の子が1668人でした。DCDQ-JとDCDQ’07(DCDQ-Jのもととなった他国で使われている質問票です)の得点を用いて協調運動の問題を評価し、その問題の有無で分類しました。DCDQ’07とDCDQ-Jのどちらを用いても同様な結果が得られ、女の子よりも男の子の方が協調運動の問題をもつ子の割合が高く、また、妊娠初期のお母さんの喫煙が、協調運動の問題と大きく関連していました。

この研究で得られたこと

今回の研究では、妊娠中のお母さんの喫煙が、就学前の子どもの協調運動の問題に関連する危険因子であることがわかりました。妊娠中のお母さんの喫煙に対する公衆衛生的な対策が、協調運動の問題の予防につながる可能性を示す結果となりました。

出典:

Satoshi Suyama, Kazuyori Yagyu, Atsuko Araki,et al., Risk factors for motor coordination problems in preschool-aged children. Pediatrics Internatinal (2020) 62, 1177-1183.

(2020 IF: 1.524)