大人になったときに肥満になるかどうか、子どものうちに予測できるの?

この研究の背景

子どもの太り過ぎや肥満の問題は、1975年以降、世界各地に拡大しています。しかし、2017年文部科学省の「学校保健統計年報」によると、日本では、太り過ぎである就学児童の割合が2000年までは増加していましたが、それ以降、徐々に減少しています。このように、日本では、子どもの太り過ぎや肥満の割合が諸外国よりも低いため、日本独自の危険因子があると考えられます。肥満に対する効果的な治療法が十分に確立されていないことから、肥満になるリスクの子どもをあらかじめ予測できれば、早期予防につながります。

この研究の目的

北海道スタディでは、妊娠中のお母さんと、生まれたお子様が1歳になったときのデータから、子どもの肥満リスクの予測因子を抽出しました。その予測因子をもとに、子どもの肥満リスク指標を構築しました。

どのようにして調べたの?
  1. 研究の対象者は、6846組の日本人の母児ペアでした。
  2. 上記1の対象者を、無作為に2つのグループ(80%の導出コホートと20%の検証コホート)に分けました。
  3. 両コホートにおいて、感度、特異度、陽性予測値、陰性予測値を決定し、精度を評価しました。
この研究が明らかにしたこと

主要評価項目は子どもの肥満とし、肥満の定義は、6歳から8歳児の肥満指数が20%よりも高い場合としました。予測因子は、妊娠前のBMI(肥満度を表す体格指数のこと)、子どもの性別、妊娠中の喫煙、教育水準、1歳時の肥満指数としました。導出コホートにおける子どもの肥満リスクは、低リスクが4.9%、中リスクが18.4%、高リスクが36.3%でした。その後の検証コホートでは、低リスクが5.2%、中リスクが18.7%、高リスクが34.4%でした。境界値(「未満」や「以下」などの境界部分のこと)のスコアを16以上とした場合、導出コホートと検証コホートの陽性予測値は22.2%と21.8%、感度は検証コホートの方が少し高めでしたが、精度の高い指数を構築することができました。

この研究で得られたこと

今回の研究では、日本人の母児ペアを対象に、子どもの肥満リスク指標を構築しました。この指標は、母子手帳から簡単に入手できるデータをもとに開発されました。今後は、この指標を改良し、立証するためのさらなる研究が必要であると考えられます。

出典:
Yasuaki Saijo, Yoshiya Ito, Eiji Yoshioka, et al., Identifying a risk score for childhood obesity based on predictors identified in pregnant women and 1-year-old infants: An analysis of the data of the Hokkaido Study on Environment and Children’s Health. Clin Pediatr Endocrinol 2019; 28(3), 81–89.

(2020 IF: 1.038)