小学生のアレルギー症状と室内のほこりに含まれる難燃剤との関係

この研究の背景

ポリウレタンやプラスチック、各種樹脂、ポリ塩化ビニール、合成ゴムなどには耐熱性を持たせるためにリン系難燃剤(PFR)が使われています。PFRはまた、床材などの家の建材や敷物やカーテンなどの内装材にも多く含まれています。そのため、こうした製品から環境中に拡散したPFRは室内のほこりに含まれます。室内のほこりに含まれるPFRに関する研究は多く行われていますが、PFRと子どものアレルギーとの関連を調べた研究は殆どありません。

この研究の目的

小学生を対象に、自宅の室内ほこり中PFR、実際にPFRを体内に取り込んだことを示すそれらの尿中代謝物と、喘鳴やアレルギーとの関係を調べることです。

どのようにして調べたの?
  1. 小学生128名を対象に、2009年と2010年の10月と11月に家庭を訪問し、アンケート調査と居間の家具類の表面のほこりを採取しました。
  2. 小学生のアレルギー症状(喘鳴、鼻炎結膜炎、湿疹)は、正解的に用いられるISAACと呼ばれる質問票で評価しました。
  3. 2回目の家庭訪問の朝に、子どもの朝一番の尿を採取してもらいました。
  4. 子どもの尿中にあるPFR代謝物濃度を測りました。
この研究が明らかにしたこと

128名の児童の内訳は、53.1%が男児で、小学校2年~6年生でした。喘鳴、鼻炎結膜炎、湿疹のアレルギー症状を呈していたのは、それぞれ29名(22.7%)、47名 (36.7%)、36名 (28.1%)でした。

ほこり中にTDCIPPという物質が多いと、湿疹が多くなっていました。が多くなっていました。尿中のTCIPP代謝物濃度が高いと鼻炎結膜炎の、尿中BDCIPP濃度が高いといずれかのアレルギー症状をがあるリスクが高くなる関連が認められました。

 

この研究で得られたこと

家のほこりの中からTDCIPPが検出される頻度はそれほど多くはありませんでしたが、湿疹との関係性が認められました。児童の尿中のPFR代謝物は長期間体内にはとどまらないので、、観察されたPFR代謝物とアレルギー症状の関係は短期的なものと考えられます。本研究ではPFRが学童のアレルギー症状との関連が認められたことから、今後もPFRとアレルギーとの関連を検討していく必要性があると考えています。

 

出典:
Atsuko Araki, Michiel Bastiaensen, Yu Ait Bamaia, et. al., Associations between allergic symptoms and phosphate flame retardants in dust and their urinary metabolites among school children, Environment International 119 (2018) 438–446.

(2020 IF: 9.621)