妊婦がダイオキシン様化合物に曝されると、子どものアレルギー感染症に影響があるの?

この研究の背景

ダイオキシン様化合物(DLCs)を含む難分解性有機汚染物には、化学的分解などが困難であるための残留性や、ヒトの健康や環境に対する有害性などの特徴があります。妊娠中のお母さんが、DLCsに曝されると、内分泌、免疫、生殖機能障害、神経行動などに影響を及ぼすと言われていますが、子どものアレルギーや感染症に及ぼす影響についての研究はほとんどありません。

この研究の目的

北海道スタディでは、お母さんの血液中のDLCsと臍帯血中のIgE(体を守る機能を持つ抗体)との関係、さらには、赤ちゃんが3.5歳と7歳になったときのアレルギーや感染症との関係を調べました。

どのようにして調べたの?
  1. 239組の母児ペアを対象に、お母さんの血液中のDLCsと臍帯血中のIgEとの関係を解析しました。
  2. 327組の母児ペアを対象に、お子さまが5歳になったときの追跡調査アンケートに回答していただきました。
  3. 264組の母児ペアを対象に、お子さまが7歳になったときの追跡調査アンケートに回答していただきました。
  4. 上記2と3を通し、DLCsとお子さまのアレルギーや感染症との関係を解析しました。
この研究が明らかにしたこと

7歳までに感染症を発症した子どもと発症しなかった子どもを比較した場合、発症した子どものお母さんの血液から高いDLC濃度が検出されました。男の子では、お母さんの血液から高いDLC濃度が検出された場合、臍帯血中のIgE濃度が著しく減少しました。7歳児では、お母さんの血液から高いDLC濃度が検出された場合、喘鳴(ゼーゼーする呼吸)および感染症の頻度も上昇しました。

 

この研究で得られたこと

今回の研究では、アレルギー症状が7歳児と7歳児以下で異なりましたが、その理由として、年長児の免疫機能の方がより成熟しているためであったと考えられます。妊娠中のお母さんがDLCsに曝されると、男の子の方がより影響を受けやすいという結果になりました。DLCの胎内曝露が、子どもの免疫反応を変化させ、学童期になったときのアレルギー発症のリスクを高める可能性を示す結果となりました。

出典:
Chihiro Miyashita, Yu Ait Bamai, Atsuko Araki, et al., Prenatal exposure to dioxin-like compounds is associated with decreased cord blood IgE and increased risk of wheezing in children aged up to 7 years: The Hokkaido study. Science of the Total Environment 610–611 (2018) 191–199.

(2020 IF: 7.963)