胎児の発育不良や早産は、母さんとお父さんに関係があるの?

この研究の背景

胎児の発育不良には、お母さんの要因(体重が少なかったり、年齢が高かったりなど)とお父さんの要因(年齢が高かったりなど)が関係していると言われていますが、このような両親の要因(いわゆる、危険因子のこと)と、胎児の発育不良によるVLBW(出生体重が1500g未満の赤ちゃんのこと)、term-SGA(出産時の在胎週数のわりに出生体重が少ない赤ちゃんのこと)、PTB(早産の赤ちゃんのこと)との関係を調べた前向きコホート研究(現在から将来に向かって追跡調査を行い、健康などの変化を観察すること)は、日本において行われたことがありません。

この研究の目的

北海道スタディでは、VLBW、term-SGA、PTBと、両親のもつ危険因子との関係について調査しました。

どのようにして調べたの?
  1. お子さまのお父さんとお母さんに、それぞれの喫煙習慣、家庭の世帯収入などの情報を含む自記式アンケートに回答していただきました。
  2. 性別、出生体重、在胎週数などの出産時の赤ちゃんの情報を医療記録から入手しました。
  3. 上記1と2のデータがすべて揃う18059組の親児ペアを対象に、VLBW、term-SGA、PTBのリスクを計算しました。
この研究が明らかにしたこと

PTB、VLBW、term-SGAの発生率が、それぞれ4.5%、0.4%、6.6%でした。PTBとVLBWでは、お父さんとお母さんの年齢が高くなるほどリスクも高くなる傾向にありました。妊娠前のお母さんのBMI(体の大きさを表す指数)が低いと(18.5kg/m2未満)、赤ちゃんがterm-SGAあるいはPTBとして生まれてくるリスクが高くなりました。妊娠初期中に飲酒していたお母さんや、term-SGAとして生まれてくるリスクが高くなっていました。一方で、お母さんとお父さんの教育年数が16年以上の場合、赤ちゃんがterm-SGAとして生まれてくるリスクが低くなっていました。また、生殖補助医療を利用すると、PTBのリスクが高くなりました。

この研究で得られたこと

今回の研究では、胎児の発育不良や早産の3つの代理指標(PTB、VLBW、term-SGA)には、両親のもつ要因が関係していることがわかりました。正常なBMI値を維持するための適切な栄養教育が、日本のPTB とterm-SGAの予防にとって重要であることを示す結果となりました。

出典:
Naomi Tamura, Tomoyuki Hanaoka, Kumiko Ito, et al., Different Risk Factors for Very Low Birth Weight, Term-Small-for-Gestational-Age, or Preterm Birth in Japan. Int. J. Environ. Res. Public Health 2018, 15, 369.

(2020 IF: 3.390)