ビスフェノールAフタルエステル類の胎内曝露と、臍帯血中の代謝バイオマーカー関係について調べてみました

この研究の背景

ビスフェノールA(BPA)は、缶詰の内側をコーティングするエポキシ樹脂やポリカーボネート製プラスチックとして、フタル酸エステル類は、食品の容器やシャンプーなどの消費者製品として、どちらも幅広く使用されています。これらの物質は、胎盤を通過すると言われているため、妊娠中のお母さんが曝された場合のおなかの赤ちゃんの発育への影響が懸念されています。代謝バイオマーカーとして、アディポネクチンやレプチンなどが知られていますが、これらの代謝バイオマーカーと上記の化学物質への曝露との関係については、ごく限られた数の研究しかありません。

この研究の目的

北海道スタディでは、お母さんの妊娠中のBPAとフタル酸エステル類への曝露と臍帯血中の代謝バイオマーカーの関係について調査しました。

どのようにして調べたの?
  1. 妊娠初期のお母さんの血液中のBPAとフタル酸エステル類の代謝物を測定しました。
  2. 臍帯血中の代謝バイオマーカーを測定しました。
  3. 上記1と2のデータがすべて揃う365組の母児ペアを解析しました。
この研究が明らかにしたこと

妊娠中のお母さんの血液中に含まれる以下の4つのフタル酸エステル類の代謝物の濃度(MiBP、MnBP、MEHP、ΣDEHPm: MEHPとMECPPの合計で、DEHP代謝物として表現したもの)と、臍帯血中の代謝バイオマーカーであるレプチン濃度において負の相関(代謝物濃度の増加でレプチン濃度の減少)がみられました。妊娠中のお母さんの血液中のBPAとレプチン濃度には負の相関(BPA濃度の増加でレプチン濃度の減少)があり、高分子アディポネクチン濃度とは弱い正の相関(BPA濃度の増加で高分子アディポネクチン濃度の増加)がありました。

 

この研究で得られたこと

今回の研究では、お母さんの妊娠中のBPAとフタル酸エステル類への曝露が、胎児のアディポネクチンやレプチンの濃度に影響を与える可能性のあることがわかりました。環境化学物質の胎児期曝露の長期間にわたる影響を明らかにするために、更なる調査が必要であることを示す結果となりました。

文責:湊屋街子

出典:
Machiko Minatoya, Atsuko Araki, Chihiro Miyashita, et al., Association between prenatal bisphenol A and phthalate exposures and fetal metabolic related biomarkers: The Hokkaido study on Environment and Children’s Health. Environmental Research 161 (2018) 505–511.

(2020 IF: 6.498)