妊娠中に喫煙したかどうかは血液を調べると分ってしまう!

この研究の背景

妊娠中の喫煙や受動喫煙は、母児ともに有害な影響があることはよく知られています。しかし、喫煙の有無を尋ねても、喫煙している妊婦さんは本当のことを言わなかったり、喫煙をしない妊婦さんは自分がどのくらいたばこの煙を吸っている(受動喫煙)のかよくわからないということがあります。

たばこの煙に含まれるニコチンは、体内に入ると1~2時間でコチニンという代謝物質に変わります。コチニンは半日くらい(約17時間)血液中に残っているので、このコチニンの量を調べることで妊婦さんの喫煙や受動喫煙の最新の状況がわかります。しかし,喫煙と非喫煙,受動喫煙と非受動喫煙に分けるコチニン量の境界(カットオフ)値というのはまだ確立されていません。

この研究の目的

日本人の妊婦さんを対象に、アンケート調査による喫煙状況と血中コニチン量を比べて,喫煙および受動喫煙の境界(カットオフ)値を設定することです。

どのようにして調べたの?
  1. 2003年4月~2007年12月に参加登録した妊婦さん5,128名を研究の対象としました。
  2. 妊娠初期と出産4ヵ月後に自己記入式のアンケートに答えていただき、妊娠中の喫煙状況(非喫煙、禁煙、喫煙)を分類しました。
  3. 妊娠後期に採血をして血中コチニンの量を測りました。
この研究が明らかにしたこと

アンケート調査による非喫煙者は3,750名、禁煙者は728名、喫煙者は650名で、喫煙率は13%でした。
血中コチニン量の中央値は、非喫煙と答えた人で0.30 ng/mL、禁煙と答えた人で0.69 ng/mL、喫煙と答えた人で94.4 ng/mLでした。
非喫煙と喫煙を分ける血中コチニン量の境界値は11.48 ng/mLとなり、非喫煙と答えた人のうち、コチニン量が11.48 ng/mL以下の人は97%、喫煙と答えた人のうち、コチニン量が11.48 ng/mL以上の人は81%でした。血中コチニン量で分類すると、709名(14%)の妊婦さんが妊娠中に喫煙をしていましたが、4,419名(86%)の妊婦さんは喫煙していないと判定されました。
非受動喫煙と受動喫煙を分ける血中コチニン量の境界値は0.21 ng/mLとなり、受動喫煙なしと答えた人のうち、コチニン量が0.21 ng/mL以下の人は63%、受動喫煙ありと答えた人のうち、コチニン量が0.21 ng/mL以上の人は68%でした。受動喫煙の血中コチニン量は、パートナーの1日の喫煙本数、家庭内の喫煙者数、受動喫煙に晒された週あたりの日数などが増えるほど、増える事が分りました。

 

この研究で得られたこと

喫煙者と同居する非喫煙の妊婦さんにとって,受動喫煙の可能性が高い場所は職場などよりも家庭であると考えられます。公共の場や職場での喫煙対策だけでなく、家庭内でも妊婦さんや胎児のために健康的な環境を整備する必要があることがわかりました。

 

出典:
Seiko Sasaki, Titilola S. Braimoh, Thamar A. Yila, et. al., Self-reported tobacco smoke exposure and plasma cotinine levels during pregnancy – A validation study in Northern Japan, Science of the Total Environment 412-413 (2011) 114–118.

(2020 IF: 7.963)